以前ライン・マイクケーブル自作の記事を書いたので、電源ケーブル自作の記事も執筆しました。
最近は機材の自作まで始めてしまい、いよいよものづくりの色合いが濃いブログとなってきました。
興味のある方はご覧になってください。
ちなみに私は電源ケーブルを「レコーディングやミキシングで音作りに使う」というスタンスですので、ピュアオーディオの場合は多少事情が異なることにご注意ください。
電源ケーブル自作の魅力
私が考える電源ケーブル自作の魅力は以下です。
- 完成品より安い
- ハンダ付けの必要もなく簡単
- 自分好みの音質を追求できる
オーディオグレードの電源ケーブルは値段も高価なものが多いのですが、自作ならかなり安くできます。
そしてラインケーブルのようにハンダ付けの必要がないので難易度はそれほど高くありません。
ケーブルも太めなのでこれも作業が楽な要因です。
ラインケーブルは細いしハンダ付けがあるし、で面倒なんですよね…。
そして自作のいちばんの魅力は自分好みの音質をとことんまで追求できることでしょう。
ケーブルはもちろん、プラグでも音質は変わります。
例えば「音に色付けしたくないのでプラグは無メッキのものを使いたい」というように、自身の好みや環境に合わせてカスタマイズできます。
ただ、市販品はやはり良くできていて、作りや音質がしっかりしています。
作り手の技術で音が変わるなんて不思議ですよね。
純正のケーブルではダメなの?
機材に付属している純正の電源ケーブルは、高価なものと比べて音に物足りなさを感じることも多いですが、メーカーは機材の調整を純正のケーブルで行っているので、ある意味その機材に最も適したケーブルであると言えます。
まずは純正のケーブルで音を鳴らしてみる。
それで低音が物足りなければ低音の出るケーブルをチョイスする。
特にスピーカーはセッティングが超・超・重要です。
もしかしたら機材・オーディオ機器がうまく鳴らないのは電源が問題なのかもしれません。
大元の電源がまずければ、そこに繋いでるものはいくら良いケーブルに変えても本来の実力を発揮できません。
その場合は電源そのものを見直して、その上で必要があれば別のケーブルを試すのが良いでしょう。
アースを繋ぐだけでもノイズレスで角の取れたクリアなモニター環境になりますよ。
電源ケーブルの自作は危険?
電源ケーブルの自作は簡単とは言いましたが、イコール安全というわけではありません。
ネジ締めが甘かったり芯線が飛び出していれば、何かの拍子に感電したり繋いでいる機器の故障や事故の原因にもなり得ます。
電源ケーブルの自作・使用は法律上問題ありませんがくれぐれも注意して作業を行ってください。
ただし素人が作った電源関連の販売はNGですし、譲渡するにしても事故が起きる可能性もありますので慎重にお願いいたします。
以上、少し怖いことを書きましたが丁寧に作業すれば大丈夫です。
ぜひ、ケーブルの自作を楽しんでください!
電源ケーブル自作に必要なもの
ケーブル
まずはケーブルが必要ですね。
もちろんケーブルには「電源用のケーブル」を。「オーディオ 電源ケーブル 切り売り」などで検索しましょう。
これは当たり前に思われるかもしれませんが、「いろいろと検索しているうちに気づいたらスピーカーケーブルを見ていた」ということもしばしばです。
オーディオ用の電源アクセアサリーの定番「OYAIDE(オヤイデ)」、業務機材のリファレンス「BELDEN(ベルデン)」や「MOGAMI(モガミ)」、エンジニアやピュアオーディオファンにも人気の「ACOUSTIC REVIVE(アコースティックリバイブ)」などいろんなメーカーからたくさんのケーブルが販売されているので探してみてください。
プラグ(アウトレット・インレット)
ケーブルだけでなく、プラグも音(電気)の通り道なので音質に影響がでます。
メーカーの違いはもちろん、ピンのメッキの種類まで含めると非常に多くの選択肢があります。
メッキの音質傾向を以下にざっくりと。
- 金メッキ:中域に特徴。柔らかめで音の伸びが良い
- 銀メッキ:高域が強くなる。固めで音の立ち上がりが良い
- ロジウムメッキ:解像度が高い。クールで天井が高くなる印象
- 銅(メッキ無):素朴で自然なバランス。色付けなくエネルギッシュ
「インレットは金メッキ、アウトレットはロジウムメッキ」というように複数を組み合わせて理想の音質に近づけることもできます。
いろいろな組み合わせを試してみてください。
プラグは 「OYAIDE(オヤイデ)」や「FURUTECH(フルテック)」のものが人気ですね。
他にもパナソニックや松下電工のものも一定の人気があります。
オーディオ用の高価なものは良くも悪くも音に色付けされてしまうので、音質変化を避けたい場合には選択肢になり得ます。
余談ですが「ホスピタルグレード」というものをチラホラ見かけます。
病院の機器は家庭用のものよりも精密な動作が求められるため、電気特性的に優れたプラグを利用しており、それをオーディオに使ったら具合が良かったのではないでしょうか。
工具類
工具類は以下のものが必要となります。
- ハサミ類(ニッパー・ワイヤーストリッパー)
- ドライバー
- テスター
まず、ケーブルの皮膜を剥くのにハサミ類が必要です。
ハサミは持っている方がほとんどだとして、あとはニッパーか、可能であればワイヤーストリッパーがあると作業がとても楽になります。
電源ケーブルの皮膜はとても厚いのでよく切れる工具が欲しいところ。
カッターでも切れますが、芯線を切らないようにケーブルをコロコロ転がして切り込みを入れていくのは、かなり大変です…。
ドライバーはプラグの固定に使います。プラスドライバーでOK。
テスターはケーブルの通電確認に利用します。
テスターにもいろいろあって値段もピンキリですが、ケーブルの自作程度であればデジタルの安いもので充分です。
テスターは無くても自作することは可能ですが、機材・機器の故障防止のためにできるだけ使用することをおすすめします。
電源ケーブルの自作に興味のある方は他にもいろいろ作りたくなる可能性が高く、後々テスターが必要になりがちなので、持っておいて損はないですよ。
電源ケーブルを作ってみよう
それでは電源ケーブルを作りましょう。
画像は「ACOUSTIC REVIVE の POWER STANDARD 8800」ケーブルと「FURTECH FI-25(生産終了品)」ロジウムメッキプラグです。
難しいことは特にありませんので、ざっくり簡単に説明していきますね。
まずはケーブルの皮膜を剥きます。
ラインケーブルと違って太く、中の芯線の皮膜も厚いので芯線ごと切ってしまうことがないので気楽です。
芯線の長さは3~4cmほど必要です。
画像のようにアルミシールドや紐やらがありますが、ケーブル以外は切ってしまって問題ありません。
芯線の皮膜も1cmくらい剥きます。芯線を切らないように慎重に剥きましょう。
芯線をプラグの穴に差し込みます。
どの芯線をL、N、GNDに差し込んでも問題ありませんが、インレットとアウトレット側で間違えて繋がないように気を付けてください。
ケーブルが赤白緑であれば、赤:ホット(L)、白:コールド(N)、緑:アース(G)にすることが多いですね。
忘れがちなカバーを、先にケーブルに通しておくのをお忘れなく!
芯線をすべて差し込んだらネジをしっかりと締めます。
緩んでいると芯線が抜けてしまいます。
芯線が枝毛のようにはみ出てていると、何かの拍子に通電して感電するということもあり得ますので、丁寧にしっかりと差し込んで下さい。
最後にカバーをネジで固定して完了です。
ケーブルを固定する部分のネジは、締めすぎると壊れてしまうので程々に締めてください。
ちなみにここの締め具合でも音が変わるとか。
曰く、「締めると硬めの、緩めると柔らかめの音になる」ようです。私はまだ試していませんが、こだわりのある諸兄には試して頂きたいところです。
芯線が抜けると言えば、私の数年使っている自作ケーブルの芯線が抜けてカバーの中で火花が散っていたことがあります。
しっかり締めたのですが、抜き差しやケーブルをねじったりしているうちに緩んだのだと思います。
どうしてもこういう部分の精度は市販品には及ばないな、と痛感しますね。
さらに万全を期すなら圧着端子を利用しましょう。
何も処理をしていない芯線をきれいに差し込むのは意外と難しいですし、どうも通電的にもいまいちのようです。
圧着端子と工具が必要にはなりますが、安全性も高くなるので試してみたいところです。
収縮チューブでむき出しの芯線の絶縁も行いたいですね。
インレット・アウトレットを取り付けて完成です、お疲れさまでした。
改めてイン・アウト側でケーブルの接続を間違えていないか確認を。
テスターで通電確認したらお待ちかね、さっそく音楽を聴いてみましょう!
おすすめの電源ケーブル
そんなに多くのケーブルを試したことはないのですが、使ってみて良かった電源ケーブルのご紹介です。
OYAIDE ( オヤイデ ) / BLACKMAMBA V2
オヤイデの電源ケーブルの中でもフラットにチューニングされたケーブルです。
実際のところはフラットというよりも「オヤイデっぽい中低域寄りの音質で、誇張が少ないながらもしっかりとムキムキの音になる」という印象。
全体的にエネルギーが増して、残響などの上の響きもきれいに広がります。奥行きもちゃんと出ますね。
私はこれをオーディオインターフェイスに接続しています。
楽器用途にも良好な結果で、どこでも使える万能なケーブルです。
結構濃い音なので、すっきりとした音が欲しい場合は別の選択肢があるのかな、と思います。
ケーブルは太くて固めなので、取り回しや加工にやや苦労します。
OYAIDE ( オヤイデ ) / TUNAMI V2
もうひとつオヤイデのパワーケーブルを。
「音が洪水のように押し寄せる」というキャッチフレーズのTUNAMI(つなみ)です。
確かに量感はすごいものがあります。
インターフェイスやモニター、楽器用アンプやシンセに繋ぐと音像は大きくレンジも広がるのですが、音がパツンパツンになってしまいちょっと微妙な結果でした。コンプがかかったような音と言いますか。
ですがマイクプリなどの録音機材に繋ぐと力強い音で録れるため、レコーディングやミックスで大活躍しています。
ケーブルは極太なため、取り回しや加工はとても大変です。
ACOUSTIC REVIVE ( アコースティックリバイブ ) / POWER STANDARD-tripleC8800
プロスタジオからピュアオーディオまで愛好家の多いアコースティックリバイブのパワーケーブルです。
本記事で自作に使ったケーブルですね。
音の印象は「色付けが無くとても自然」で、純正ケーブルのサウンドバランスそのままにグレードアップしたような音質です。
厳密なモニタリング環境が求められるプロスタジオに導入されているのも納得。
積極的にケーブルで音作りをしたい方には少し物足りないかもしれません。その場合はオヤイデなどがおすすめです。
ケーブルは柔らかく加工や取り回しが非常に楽なのも好印象ですが、結構なお値段です。
さいごに:私の失敗談など
電源ケーブルはオーディオ機器の音色を劇的に変える魅惑のアクセサリーですが、高価なものに変えたら不満点がすべて解決するわけではありません。
良いサウンドを鳴らすには電源の質から機器やスピーカーのチョイス・セッティングまでトータルで考えることが重要です。
昔、20万以上する「アレグロ」というぶっといケーブルを買ったことがありますが(販売終了品)、当時の私の未熟な環境では値段ほどの違いがよく分かりませんでした。
それでも「音が太くなった」「音が迫ってくる」などと思いこみ、周囲に吹聴していたものです。
すでに手放してしまい今は手元にありませんが、現在の環境だとどんな音になるのでしょうか…。
また、あれもこれもと高価な(音に個性がある)電源ケーブルを繋いでいくと、音が飽和してしまうことも多く、そんなときは付属のケーブルに戻すと音が引き締まって改善したりします。
ところで巷では電源ケーブルに必要以上にこだわるひとを「電線病」なんて言ったりするようです。
とても楽しい病ですが、「木を見て森を見ず」とならないように、ほどほどに楽しみたいものであります。