前回パライコを作成しました。
グライコでよく使用されている「ジャイレータ(Gyrator)」と言われる回路方式を利用したパライコでしたね。
音質に不満はないですし、部品点数も少なくてコスパが非常にいいのですが、やはりQ幅が変更できないのが気になります。
という訳で、今回はQ値が可変のイコライザー回路を紹介したいと思います。
Q値可変のステートバリアブル型フィルタ
本記事で紹介するのは「ステートバリアブル型フィルタ(State-Variable Filter)」です。
「状態変数型」とも呼ばれています。
実はジャイレータフィルタでもQ幅の変更はできるのですが、Qを変えると中心周波数も変わってしまいます。
これではちょっと不便というか実用的ではありません。
対してステートバリアブル型は中心周波数に影響を与えずにQ幅を変更できます(ゲインは変わります)。
下図がステートバリアブル型のざっくり回路図です。

ステートバリアブル型はオペアンプを3チャンネル使用します。
役割としては、U1がハイパスフィルタ、U2がバンドパスフィルタ、U3がローパスフィルタとなっています。
入力信号(INPUT)をU2のバンドパス出力と加算し、さらにU3のローパス出力を減算することでピーキングEQとして作用します。
さて、このままではQもゲインも周波数も変更ができないので実際に組んだ回路図を見ていきます。
ステートバリアブル型フィルタ回路図
参考サイトはいつものESPの「State Variable Filters」です。
著作権が怖いので画像は貼れませんが、「Figure 5 – Parametric Equaliser #2」のとおり組めばOKです。
ちなみに私は部品点数を減らすため、下図のようにVRと抵抗を直列にしました。
並列時と音質的にも差があるようには思いません。

周波数計算プログラムと計算式も置いておくので、自作時にご利用してください。
state-variable 中心周波数(f)
中心周波数計算式
基本的にR9とR10、C2とC3は同じ値を使用するのでR、Cとします。
$$f=\frac{1}{2π × (VR3+R) × C}$$
C2とC3を異なる値にすることで中心周波数をさらに細かく設定できます。
その際の計算式は以下です(R9とR10は同じ値にします)。
$$f=\frac{1}{2π\sqrt{(VR3A+R9) × C2 × (VR3B+R10) × C3}}$$
さいごに:回路を組んだ感想・注意点など
ジャイレータ型のパライコも良かったのですが、やっぱりQ・周波数・ゲインを独立して操作できるのは楽しいです。
欠点としては回路規模が大きいので組むのが大変・お金がかかることでしょう。
当回路は1バンドでオペアンプ4チャンネルが必要ですからね…。
ちなみにステートバリアブル型フィルタをもう1バンド作って繋げるときは直列にするのがおすすめです。
並列でも音が出ますがすぐに歪んでしまいます。オペアンプが1チャンネル浮くので助かるんですけどね…。
次はシェルビング・ピーキングが切り替えられるハイ・ローイコライザーの作り方です。
いよいよパラメトリックイコライザーの完成が見えてきました。
