「PC用にスピーカーを買ったけど、モニターの横に適当に置いている」
「それなりに高いスピーカーを買ったけど、音がいまいち…」
こんな方のために書きました。
あなたはスピーカーの置き方、いわゆる「セッティング」を意識していますか?
スピーカーの置き方?
好きな場所に置けばいいんじゃないの?
もちろんそれでも音楽は聴けます。
ですがせっかく買ったスピーカー。
どうせならその実力を最大限に引き出して、いちばんいい音で音楽を楽しみたいじゃないですか。
セッティングについてはいろいろな方法論がありますが、ここでは不変のエッセンスと私が取り入れている方法を、細かい理屈は抜きで不足なく、分かりやすく説明します。
音楽専門学校卒。
ギタリストとして20年以上のキャリアがあり、PAやレコーディングエンジニアとしても活動していました。
セッティング(置き方)の重要性
セッティングの重要性を知らないと、今持っているスピーカーの実力を引き出せません。
スピーカーを置く場所、台の材質、両スピーカーの間隔、角度はどうするか…。
部屋の広さ、床の材質や、壁からの距離も音に影響を与えるし、機材の前に雑誌を積んだだけでも音は変わります。
スピーカー自体の性能はもちろん大切ですが、置き方もそれに負けないくらい重要です。
高価なスピーカーを買ったけど、安価なスピーカーの方がサウンドバランスがいい?【体験談】
いいスピーカーを買ったのに、「あれ、こんなもんか?」と思った経験はないでしょうか?
高性能のスタジオモニターやハイエンドのスピーカーは、セッティングが甘いとしっかりとしたサウンドバランスで鳴ってくれません。
対して安価なスピーカーは、ライトユーザーのために適当に置いてもそれなりのバランスで鳴るように作られている印象です。
これは私がセッティングも重要性を知らなかったころの話ですが、ハイエンドのスタジオモニターを買ったものの適当な置き方をしていたため、友人の家にあった1万円程度のスピーカーのほうがいい音が出ていてショックだった経験があります。
セッティングでスピーカーの本当の性能を引き出して、音楽を楽しみましょう。
ちなみにそのスピーカーはBOSEの「Companion 2」というロングセラーのPCスピーカーで、いい音が出ていたのもいま思えば納得です。
スピーカーの基本セッティング(置き方)
まずは基本とされるセッティングを見ていきましょう。
ここではまだ仮置きの段階なので、アバウトな置き方で大丈夫です。セッティングの基本ができてから音を作り込みましょう。
スピーカーをしっかりとした台の上に置く
スピーカーはある程度の重量があり、グラグラとしないものの上に置いてください。
というのも、音の再生に「振動」は非常に大きな影響を与えてしまうからです。
可能な限り、しっかりとした台やデスクの上に置くのが望ましいですね。
また、両スピーカーを置く台は、極力同じものを使用してください。
左右でスピーカーの設置条件が異なると、音の鳴り方が左右で変わってしまうので、調節が難しくなります。
スピーカーの角度は?
スピーカーの角度は、まずは正面に向けることをおすすめすします。
この方が自然なサウンドで鳴るからです。
この後、スピーカーの音場をコントロールする際に、必要であれば角度の調整をします。
角度については後述します。
スピーカーの高さについて
2wayの場合はリスナーの耳とツイーターの高さがだいたい同じ高さになるように、3wayの場合はツイーターとスコーカーの間と耳の高さが同じくらいになるようセッティングをします。
(おおざっぱに言うと、スピーカーの前面に付いている丸い部分が2つなら2way、3つなら3wayです)
「耳の高さに」とは言いましたが、座椅子や床に座った高さで合わせてしまうと、床からの反射音の影響で音が不鮮明になります。
畳の部屋の場合は、畳が低音を吸ってしまうので、床から1m以上の位置に設置したいですね。
スピーカーの高さを変えると「スッキリした音になる」「低音が響く」というようにサウンドが変化していくので、ご自身がいいなと思う高さにしてください。
何らかの制限があり、スピーカーと耳の高さがあまりにも離れてしまう場合は、上向き・下向きに角度をつけることも選択肢に入ります。
あまりに耳とスピーカーの高さがずれていると、音楽が本来のバランスで聞こえないからです。
リスナーとスピーカーの距離、壁との間隔は?
リスニングポイントと両スピーカーの位置関係が正三角形になるように置くのが基本です。
スピーカーと後ろの壁からの距離も揃えること。距離はできれば2〜30cmほど離したいところ。
可能であれば左右の壁からの距離も揃えてください。
良い例
スピーカーと壁との間隔は重要です。
私たちはスピーカーからの音だけでなく、壁からの反射音も同時に聴いているからです。
その反射音がスピーカーからの直接音に影響して、音質を良いものにも悪いものにも変えてしまいます。
部屋の響きも重要
スピーカーを置く場所の音の響きも確認してみてください。
「パン」と手を叩くとわかりやすいです。
圧迫感や音の篭り、耳障りな反響音が少ない場所、位置にスピーカーを置くのが理想です。
不鮮明な音の響きがある場所にスピーカーを置くと、やはりスピーカーの音を不鮮明なものにしてしまいます。
部屋に物が少ない場合は反響音が際立って聞こえますが、生活に必要なものを置いて解消すればいいでしょう。
特殊な作りや材質の部屋で、過度の反響が解消できない場合は、吸音材の導入が必要になるかもしれません。
サウンドをコントロールする
今までスピーカーの置き方を意識しなかった方は、ここまでの基本セッティングを行っただけでも、かなりの音質の変化を感じたはずです。
ですが、まだまだ理想のサウンドには程遠いでしょう。
「ボーカルにもっと存在感が欲しい」
「サウンドをもっと量感あるものにしたい」
「分離のいい、クリアなサウンドで鳴らしたい」
大丈夫です。
これらはスピーカーの置き方でコントロールできます。
ここからがスピーカーセッティングの醍醐味ですよ!
スピーカーを前後させて音のクリアさ・量感を調整する
それではスピーカーの位置を前後させましょう。
数センチ、数ミリ動かしただけでも音の違いがあるはずです。
大変ですがミリ単位でスピーカーの位置を揃えるのが理想です。
音が全体的にモヤっとして低音が潰れているときは、後ろの壁から離すと改善するでしょう。(高さを変えると改善する場合も多いです)
これはスピーカーの後ろに回りこんだ低音成分が、壁に反射してスピーカーからの直接音に影響するからです。
壁からはある程度離した方がいい結果が出ることが多いですが、離し過ぎると今度は迫力や量感が失われてしまいます。
音がクリアになると全体の量感が減り、逆に量感が増えるとクリアさが失われるという関係ですね。
ここぞという位置を見つけてください。
PCのモニターやテレビの横にスピーカーを置くときの注意点
スピーカーの前面がモニターより前に出るようにして下さい。
モニターがスピーカーよりも前にあると、音がモニターに反響してしまいサウンドの鮮明さが失われます。
左右の間隔でセンターの存在感と空間の広がりをコントロールする
センターの調整は、ボーカルありの音源でやると分かりやすいでしょう。
私たちは人の声を聞き慣れていますからね。
センターを強調したいときはスピーカーの間隔を狭める。左右の広がりが欲しければスピーカーの間隔を広げる。
スピーカーの位置を狭め過ぎると音が窮屈になり、広げ過ぎるとセンターが希薄になります。
スピーカーの左右の位置を移動すると、音のクリアさや量感が変化します。
必要に応じて前後と左右の調節を繰り返してください。
どうでしょう?
かなりいい感じのサウンドになったのではないでしょうか?
最後にスピーカーの角度を調整しましょう。
スピーカーの振り角で迫力をコントロールする
スピーカーを正面に向けたままでも十分にいいサウンドで鳴っている場合は、角度を付ける必要はありません。
左右の位置を調節してもセンターの音像が弱い場合に、振り角を付けるといい結果が出ることがあります。
スピーカーの角度を少しずつ内側に振っていくと、センターのサウンドに力強さが乗ってくるのがわかる思います。
ロックなどをよりパワフルに聴きたい方におすすめです。
ただしあまり角度を振り過ぎると、音に開放感や広がりが無くなって不自然なサウンドになりますので、自然で迫力を感じるポイントを探してください。
スピーカーに角度を付けると音の広がりがなくなるので、必要に応じて間隔を広げましょう。
間隔の調整だけで追い込めない場合は、またスピーカーを前後に動かし、ここまでの手順を繰り返します。
スピーカーを片側だけで鳴らしてみる
スピーカーの機種にもよりますが、可能であればスピーカーを片側だけ鳴らしてみましょう。
右と左、どちらがあなたの好みのサウンドに近いでしょうか?
「右は低音が出ていて迫力を感じるけど、左は明るく拡がりのある音」といったように、部屋の間取りも含めて完全に対称にセッティングをしていない限り、右と左で出音は微妙に違うものです。
好みの音が鳴っている側のスピーカーを基準にもう片側を調節すると、ビシッと音が決まることが多いです。
サウンドバランスの基準は?
セッティングをいろいろと試しているうちに、どのバランスが正解なのか分からなくなってくると思います。
耳や感覚が麻痺するんですね。
そんなときに振り返る基準として、私の場合は普段使っているヘッドフォンのサウンドに近いバランスにしています。
レコーディングをする都合上、スピーカーとヘッドフォンのサウンドバランスが極端に違うと作業に支障が出てしまいますし、素性のいいヘッドフォンは音のバランスがいいからです。
スピーカーのイコライザーについて
スピーカーにはイコライザーが付いているものもあり、自分の欲しい音色に調整できるので便利です。
ただしイコライザーで音質を調整するのは、セッティングではどうしてもサウンドを追い込めない場合の最後の微調整に留めてください。
イコライザーで音質を大きく調整しないといけない状態というのは、セッティングやスピーカーそのものに問題がありますし、不自然なゆがんだサウンドになってしまいます。
オーディオアクセサリーでチューニングする
インシュレーター
スピーカーを台に直置きするのとインシュレーターを挟むのでは、音の広がりやクリアさの違いが歴然です。
ここまで長々とセッティングについてお伝えしましたが、正直このインシュレーターを置く方が手軽にサウンドの変化を実感できます。
これを使うとあまり音質に興味のない方でもその変化に驚くので、反応を見るのが楽しいです。
入門用としてはこちらが安くて効果も実感できるので、おすすめです。
残念ながらAT6098は生産終了となってしまいました。
長年オーディオ業界を支えてくれてありがとう…。
スピーカースタンド
スピーカーの置き場所、特に高さの確保というのは、なかなか悩みどころですよね。
机の上に置いている方も多いと思いますが、スピーカースタンドがあると高さの問題が簡単に解決できます。
電源タップ
スピーカーに電源を供給している電源タップを、オーディオ用のものに変更するだけで音色の変化を楽しめます。
種類や値段はピンキリで、上位のものほど個性的な音になるようです。
ただしむやみやたらに繋いでしまうと、逆に音がもっさりしたりするので注意したいところ。
定番オヤイデの電源アクセサリー。楽器のアンプにも効果絶大です。
オーディオボード
防振対策にスピーカーやアンプの下に敷く。
ホームセンターのブロックでも効果はあるが、オーディオ用はなんといっても美しい。
せっかくだから目でも楽しみたいですね。
インシュレーターと組み合わせると、さらにチューニングの幅が広がります。
製品や材質によって音も変わってきますが、コンコンとノックしたその音がサウンドに乗ると判断していいでしょう。
さいごに
お疲れ様でした。
ここまでたどり着いたあなたのスピーカーから出てくるサウンドは、以前とは比較にならないほどいい音になっているはずです。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
あなたのオーディオライフが素晴らしいものであらんことを。