以前、オーディオ用途に抵抗の音質比較をしました。
そのまま続けてコンデンサの比較もするつもりでしたが、まさかの1年以上たっての投稿となってしまいました。
その理由としては、ニチコンのオーディオ用電解コンKZ・FGやWIMAのフィルムコンで満足していたからです。
抵抗と比べて記事にするほど選択肢がないという訳ですね。
ですが最近、ニチコンのKZ・FGが生産終了となったために慌ててコンデンサを探し始めたのですが、いやいや、いろいろおもしろいコンデンサがありました。
それなりに手元にコンデンサが増えたので、ようやくの比較記事となります。
本記事のタイトルは「オーディオ用」となっていますが汎用品も多く紹介します。
オーディオ用に絞るとそれこそ選択肢がなくなりますし、汎用のものでも音質的に優れたコンデンサもあります。
なによりオーディオ用はディスコンになりやすいので、使える汎用品を探しておきたかったというのが大きな理由です。
当然ですが試していないコンデンサもたくさんあるので、今後も新しいものを試したら記事の更新をしたいと思います。

コンデンサの比較方法
コンデンサの使用箇所
今回は自作マイクプリアンプのオペアンプのパスコンに使用しましたが、電源であればどこに使っても似たような音質の変化になると思います。
ただしカップリングでは印象が変わるようなので、後日また検証をしたいと思います。
テストはブレッドボードにて行いました。
容量と耐圧について
パスコンには0.1μFと10μFのものを使用するのがセオリーですが、今回は純粋な音質比較のため、容量はあまり気にせず試してみました。
ものによっては丁度いい容量のものがなかったりしますから。
耐圧に関しては実験用機材の電圧が±15Vのため、25V以上のものを使用しました。50Vや100V、600V以上のものもあります(コンデンサの耐圧は電圧ギリギリを選ぶのではなく、電圧の2倍程度以上のものを選ぶようにしてください)。
同シリーズでも耐圧で音質は違うので、できれば耐圧も揃えたかったのですが、こちらも予算やラインナップの都合上、無視することにしました。
音的には耐圧が高いほど、開放的な音になる傾向があります。
容量でも音の違いはあると思いますが、耐圧を気にするだけでも大変なのでずっと無視しています。いつかは検証したいなぁ…
エージングについて
エージングは基本的に数時間程度ですが、オッと思ったものはさらに数時間印加しています。
エージングを進めると音の開放感が増す・音像が大きくなる傾向にありますが、エージング前の印象から大きく変わることは稀と思っています。
具体的に言うと、音のバランスなどはコロコロと変わりますが、良い・悪いの判断が覆ることはほとんどありません。
とは言うものの、自作機材に本採用するかどうかは音が安定しないと判断できないので、実装候補のコンデンサは最低100時間はエージングをします。
コンデンサに限らず、素子のエージングはこのくらい時間をかけてやっと安定するかな、という印象です。
ソース
SM57を使ったアコギの録音とベースのライン録りでテストしました。DAWはCubaseです。
流し込みならセッティングの違いを排除できるし、いちいち演奏をしなくていいので楽なのですが、その場合生演奏を録音するほどの変化は感じられないんですよね。
CDでステレオ感や楽器の立ち位置等の変化も確認したかったのですが、モノラルのマイクプリなのでソースは限られてしまいました。
また、録音の比較にGainMatchというプラグインを使用しています。
こういった音質比較では「音量が大き方が良い音に聞こえてしまう」のですが、GainMatchは録音AとBの音量を自動で揃えてくれので非常に便利です。
電解コンデンサの音質比較
電解コンデンサは数百~数千と大容量なものが多く、電源回路などに多用されています。
極性があるものが一般的ですね。
音質的には、オーディオ界隈では「電池の音」などと嫌われたりします。
確かに電解コン特有のサウンドはありますが、使わないと「プロオーディオっぽい音」にもならないと感じます。
nichicon FG 「Fine Gold」
数少ないオーディオグレードの電解コン、nichicon(ニチコン) FGです。
私が電解コンを使用するときのファーストチョイスです。残念ながらディスコンなので今後は別のものを探さないといけません。
音質は伸びのある中高域が特徴で、品や華があります。
よく聞くと重心が低く、音に艶もあります。
nichicon KZ 「MUSE」
FGで軽い、キンキンすると感じたときにこちらを選択することが多いです。
ニチコンのうたい文句のとおり量感があり重心が下がるような感覚がありますが、よく聞くとフラット。
中高域にあまり特徴がない、というと聞こえが悪いですが、耳に痛かったりこもるところが見当たらず優しい音です。
個人的には色付けをせず量感を足したいときに使えるコンデンサです。
こちらもディスコン…残念です。
nichicon VR

耐圧100Vのコンデンサを探していたのですが、この汎用電解コンくらいしか見当たらず仕方なく購入。
ですが音を出してみてそのバランスの良さに驚きました。
開放感は不得意ですが、電解コンに感じるキンキンとした鉄っぽい鳴りや、密度の物足りなさがほとんど感じられません。
コンデンサの比較をしていると音の基準が分からなくなってきますが、そのときはこれで耳をリセットしています。
nichicon PW
こちらも汎用の電解コンです。
ニチコンのFGに似た音質で中高域に特徴があります。
FGよりも上にピークがあり明るいのですが、開放感・量感ともに劣ります。
中高域にエネルギーが集中しているような音質で、ギターのストロークではアタックの成分が強調され耳障りに感じることも。
MUNDORF ECap

MUNDORF(ムンドルフ)はドイツのハイエンドオーディオ向けのネットワークパーツのメーカーです。
低域が得意でサウンドの重心が下がります。KZのような量感とはまた違って、500Hzあたりの中域がカットされた、ドンシャリな音です。
高域をブーストしたような耳に痛いドンシャリではなく、上品で音楽的なところが好印象。
ドンシャリ好きな方にはハマりそうなコンデンサです。
ELNA RFS 「SILMIC Ⅱ」
明るく立体的。
明るい音のコンデンサにありがちな、カサカサ・シャリシャリする感じではなく「硬質さ」を感じます。
これがクリアさや解像度の高さに繋がっているのかな…量感や力強さもあります。
ベースで特に印象が良く、太くクリアでワイドレンジ。曲やミックスで合う合わないはあると思いますが、個人的には好きな音が録れました。艶は少し弱いかも。
Panasonic OS-CON
こちらは導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーというジャンルです。
電解コンは電解液を使用しますが、これは個体の電解質を使用しています。
ESR(コンデンサの等価回路の抵抗成分)が低くノイズ除去能力や周波数特性に優れたコンデンサで、寿命が長いのも特徴のようです。
「ESRが低いと音的には解像度が高い音になる」といった文言を見かけたことがありますが、真偽は分かりません。
で、肝心の音質はというと、確かに一般的な電解コンよりもクリアで見通しのいい音です。セラミックコンデンサに似たバランスで高域がかなり伸びますが、単体では量感や奥行きを出すのは不得意かな。
容量が必要で、かつ高域をきれいに聴かせたいときに試してみたいコンデンサです。
Rubycon PZ-CAP
ルビコン製の、こちらも導電性高分子アルミ固体電解コンデンサですが、電解質が導電性高分子(個体)と機能性液体の「ハイブリッドタイプ」です。
音質はライバル(?)のOS-CONよりやや暗く開放感が弱いですが、量感や艶があります。
OS-CONと一般的な電解コンとの合いの子という印象で、バランスは良いがどっちつかずとも言えるかもしれません。
「電解コンでは重いがOS-CONではクリアすぎる」というときの選択肢になりそう。
セラミックコンデンサの音質比較
セラミックコンデンサは他のコンデンサよりも長時間のエージングが必要です。
20~30時間でようやく音の比較が始められるかな、という印象です。
日本ケミコン THD

音の歪みや痛さ・気になるモヤ付きも無くクリアのひとことに尽きます。 今回試したセラコンの中ではいちばんすっきりしているかな。
村田 RDE (X7S)

X7Sというのは温度特性であって名称や型番ではありません。X7Rというのもありますが、そちらは未確認です。
THDが中高域寄りなのに対し、こちらは中低域寄り。 締まりや適度な立体感もある。 単体で使うならRDEの方が音作りしやすそう。
TDK FK22

先のセラミックふたつより明確に中低域が出ています。 代わりに中高域の立体的な煌びやかさは譲るかな。 いちばん主張がないとも言えるので、パラとかで組み合わせやすそうです。
村田 GRM(C0G)

こちらはチップ積層セラミックコンデンサで、C0Gというのも温度特性です。
ESRが低く、オーディオ用途としてもお勧めのようです。チップタイプなので錫メッキ銅線をハンダ付けしてのテストです。
電解•フィルムも含めて特に重厚な音。 個人的にセラコンに求める解像度や開放感はあまり感じないです。
他のセラコンと比べてエージングの時間がやや短かったり、ハンダ付けした銅線の影響もありそうなので参考程度に。
フィルムコンデンサの音質比較
フィルムコンデンサは他のコンデンサと比較して、「温度変化に強い」「漏れ電流が少ない」など特性的に安定しているところが魅力です。
音質に関してもクセが少なく、音楽的な音を出してくれることが多いです。極性が無いのも気楽に使えて良いですね。
素材は主に「ポリプロピレン」と「ポリエステル」が使用されます。オーディオでは「ポリプロピレンの方が音が良い」と言われることが多いようで、私も確かにポリプロピレンの方がレンジが広くて使いやすいと感じます。
ポリプロピレンは耐電圧、誘電損失、絶縁抵抗等の特性の面でもポリエステルより優れており、産業の分野でも主流になっているようです。
参考:Panasonic 「フィルムコンデンサの基礎知識 ~特性・用途~」
WIMA MKP2

メタライズドポリプロピレンフィルム。
よくプロオーディオに載っているやつで聴き慣れた音という感じです。上から下までよく出ていて、かつニュートラル。欠点が見当たりません。
私のフィルムコンのファーストチョイスで、多くのメーカーが採用しているのも納得です。 個人的に、少しパツっとした艶というかコンプ感が乗る気がしていて、そこも面白いと感じます。
フィルムコンは、まずはこれを買っておけば間違いないです。
WIMA MKS2

MKP2はポリプロピレンですが、こちらはポリエステル。
音はMKPとよく似ていますが、高域が抑えられ中低域に音が寄る印象。 奥行きや低音もMKPの方が出ているかな。
中域が強調されるのでMKPより音が前に出る印象を受けるかもしれません。
Vishay/Roederstein ERO MKT1813

メタライズドポリエステル。
最近の機材づくりにはちょっと合わなくてお蔵入りしていました。久しぶりに音を聞いてみると、「あれ、良いじゃん?」と感じました。
以前耐圧63Vを使ってイマイチな印象でしたが、100Vは素晴らしくて驚きました。 高域も低域もWIMA MKPより出ていて音がはっきりとします。カラッと明るい音ですね。
中低域は僅差でWIMAの方が豊かです。MKP2の方が陰影があり、立体的な音にしやすいかな。
相対的にWIMAは中域に寄った丸い音に聞こえるようになってしまいました。
イメージで判断するのではなく、ちゃんと音を出して検証しないといけませんね。
Panasonic ECHU(50V)

面実装タイプ。フィルムというよりセラミックコンのような音です。 高域の伸びた明るくクリアな音ですが、中低域のコシがないため、単体では物足りなく感じます。
AUDIN-CAP MKT

脚色のない素の音を出してくれるという印象。
と言っても地味・無個性というわけではなく、生楽器にハマりそうな品のある音です。 MKTはエントリーモデルで、他にもたくさんの素子があり、ぜひ試してみたいと思わせてくれます。
SOLEN FastCap

明るくキレイな中高域に耳を惹かれます。弦にハマりそう。
下はスリムに聞こえる印象…と思いきや低音もしっかり出ていて全体的に音の圧が増します。 これは美形マッチョなコンデンサです。