機材入れ替えのためTRSフォン-XLRコネクタのラインケーブルが必要になり、久しぶりに自作をしました。
しょっちゅうケーブルを作っている訳ではないので、配線をいつも忘れてしまっています。これもいい機会なので、ケーブル自作の備忘録としてこの記事を残します。
当記事ではTRSフォン-XLRコネクタを扱いますが、オス側とメス側で配線の番号を合わせるだけなのでマイクケーブル用のXLR-XLRコネクタや、楽器用のTRS-TRSフォンケーブルも作れます。
それではさっそく見ていきましょう。
ラインケーブル自作に必要なもの
ケーブルの自作に必要なものを見ていきます。
まずはパーツ類です。
- ケーブル(マイク・ライン・楽器用)
- コネクター(XLR・TRSフォンなど)
- ハンダこて(温度調節できるものがおすすめ)
- ハンダこて台(火事や事故防止に)
- ハンダ(ケスター44などの楽器用が望ましい)
- ニッパーやワイヤーストリッパー
- テスター(通電の確認)
以下では私が使ったパーツ・工具類をご紹介します。
ケーブルやコネクターにも音のキャラクターがあるので、興味のある方はぜひいろいろ試してみてください。
深い沼の世界が待っています(笑)
ラインケーブル:BELDEN(ベルデン) 88760

今回はケーブルは BELDEN 88760を使用しました。定番ラインケーブルのひとつです。
その他の定番として BELDENの8423(3芯)、MOGAMIの2534(4芯)、2549(2芯)などがありますが、これらはマイクケーブルとして使用することが多い印象です(もちろんラインケーブルとしても使えます)。
個人的には好みの音が出ればどこで使っても良いと思っています。
ただ楽器用、特にエレキギターをアンプに繋ぐケーブルには BELDENの8412(2芯)が、「らしい音が出る」のでこちらを好んで使用しています。
ライン・マイク用ケーブルではレンジが広すぎるのかもしれませんね。
話を BELDEN 88760に戻します。
この88760はハイが伸びた特にクリアな音なので、私はラインのみならずマイクケーブルにも使用しています。
(ケーブルが物に触れるとノイズが乗りやすいのでマイクケーブルとしては使用できないことも…)
欠点を挙げるならケーブルが固く取り回しや自作時にイライラすることでしょうか。
お値段も他のものよりやや高いです。
コネクター:NEUTRIK(ノイトリック)

私はコネクター類はいつもNEUTRIKを使用します。
ほかのコネクターと音質の比較をしたわけではありませんが、安心感がありますね。
今回はバランス接続に使うのでTRSフォンを使用します。
TRSフォンと TSフォンの違いについて

ちなみにTRSフォンとTSフォンの違いですが、上の画像のようにコネクターの黒い線がふたつあるのがTRS、ひとつのものがTSフォンになります。
ステレオケーブルなどは TRSフォン、ギターなどの楽器用ケーブルは TSフォンになっていますね。
これはTip、Ring、Sleeveの略です。
TRSフォンは3極のバランス仕様、TSフォンはTipとSleeveの2極仕様ということです。
アンバランスとバランスの違いを一言でいうと、「アンバランス接続の方がノイズに強い」です。
(バランスとアンバランスについて詳しく説明をすると1記事書けるくらいになってしまうので、興味のある方は調べてみてください)
とは言え自宅スタジオレベルなら TSフォンを選択しても問題になることはないと思います。TSフォンのほうが安いですしね。
プロスタジオや何メートルものケーブルを敷く場合にバランス接続が必要になってきます。
ハンダこて:ダイヤル式温度制御はんだこて

以前私は安物のハンダこてを使ってハンダ付けをしていましたが、良質なハンダこてを使うと「こんなに作業がスムーズになるのか」と感動しました。
安物のハンダこてでイライラしながら作業をしていたのが、今となってはアホらしく感じます。
こては単体でも売っていますが、こて台もセットのものが安いです。私はセットの存在を知らなくて別々に買ってしまいました…。
このこて台も「こて先クリーナー」がついているので非常に便利です。
クリーナーにフラックス(ハンダを溶けやすくする)が塗布されているようで、2,3回差し込めばこて先がピカピカになります。
ハンダ:ケスター44

楽器用ハンダの定番中の定番、ケスター44です。
オカルトのようですが、ハンダの種類でも音質は変わります。コアなオーディオファンはハンダの種類にもこだわっていますね。
100均でもハンダは手に入りますが、ケーブル用にはこういったハンダをおすすめします。
テスター

ケーブルの通電・ショートしていないかの確認に必要です。
ケーブルがショートしていたりすると機材が壊れる可能性もあるので、必ずテスターで確認をしましょう。
その他:あると便利な工具類
最後にあると便利な工具類を見ていきます。
ケーブル作成には必ずしも必要ではありませんが、あると作業が捗ります。
そして、あるとイライラしません(笑)
- ハンダ吸い取り器(失敗時にハンダを取り除くため)
- ペンチやピンセットなど
- クリップスタンド

画像左がハンダ吸い取り器です。
ハンダを付けすぎたときにハンダを簡単に取り除くことができます。
ピンセットやペンチなどもあると何かと助かりますよ。
最後に、私は持っていませんがクリップスタンドがあるとケーブル自作に便利です。
ケーブルのハンダ付けって、端子やケーブルが逃げてイライラするんですよね。
こうなると作業時間も取られますし、何よりハンダ付けの質、ひいてはケーブルの音質が悪くなります。
これからケーブルをたくさん作る予定の方は買っておくと便利です。
ルーペ付きのタイプもありますね。
クリップスタンドはたくさんありますが、レビューを見る限り値段や質ともにこのあたりが無難そうです。
ハンダ付けの善し悪しで音質が変わる?
ハンダ付けに慣れていないとハンダを付けすぎたり、熱しすぎてハンダや端子を焦がしてしまったり…、私にも身に覚えが山ほどあります。
ハンダの付け方がいまいちでも音は出ますが、音質は悪くなりますね。
以前楽器屋の店長に、私がいつも使っているパーツで楽器ケーブルを作ってもらったことがあるのですが、明らかに私が雑に作ったケーブルよりも音が良くて驚いたことがあります。
店長のケーブルの方がクリアで音の̚カドが取れていました。
それ以降は私も丁寧にケーブルを作るように心がけています。せっかく作るんですから、少しでもいい音にしたいですよね。
■ハンダ付けの注意事項
- 温度調節できるハンダこてを選ぶ(作業時の温度は350度前後で)
- ハンダの量は多すぎず、少なすぎず
- ハンダの熱しすぎに注意
- 適切に付けたハンダは見た目も美しい
XLRコネクターの取り付け
それではケーブルを作っていきます。まずは XLRコネクターの取り付けからです。
もちろんオス・メスのどちらから取り付けても問題ありません。

ニッパーやワイヤーストリッパーで皮膜のみを切り取ります。
切り込みを入れて引っ張ればスルッと抜けます。
意外と簡単に芯線まで切れてしまうので慎重に行きましょう。

アルミ箔(?)をほぐすと芯線が出てきます。
アルミはハサミで切ってしまいましょう。

芯線の皮膜も剥いてしまいます。
こちらも芯線を切らないように慎重に。
皮膜に切り込みを入れたら、ペンチで引っ張ると楽に取れます。
ここの皮膜は結構取りづらいんですよね。

XLRコネクターをバラします。
コネクターは図のように4つのパーツからなっています。

まずはブッシングを通しておきます。
ハンダ付けをした後ではブッシングが付けられないので、先に通しておくのを習慣にしましょう。
せっかく付けたハンダをまた付け直す…こんな悲劇はもう繰り返してはいけません。

接続箇所の確認です。私は以下のように接続します。
- 1(GND):シールド
- 2(HOT):赤
- 3(COLD):黒
HOTには赤を繋ぐひとが多い印象ですね。
HOTとCOLDに繋ぐケーブルは逆でも大丈夫ですが、オス・メスでつけ間違えないように注意してください。

ハンダ付け中。
画像は端子やケーブルが逃げないようにペンチとピンセットで固定してハンダを付けています。
先にケーブルや端子にハンダを載せておけば(仮ハンダ)、割とスムーズに付けられます。
私は持っていませんが、クリップスタンドがあると便利ですし、仮ハンダなしでもきれいに付けられます。
片側のハンダ付けをしていて思ったのですが、マスキングテープなどでケーブルを机に固定するのも良さそうですね。
次回からそうします。

内側のカバー(チャック)を取り付けます。
ハンダ付けした箇所に負荷がかからないようにするパーツですね。

ハウジングを付けて完成です。
TRSフォンの取り付け
続いてTRSフォンコネクターの取り付けです。
コネクターはNEUTRIKのTRSフォンをチョイス。
XLRとの接続端子が分かりにくいので画像を載っけておきます。
接続先を間違っていたらいけないので、念のため接続前にテスターでも確認しました。

小さい…。初心者の方だと苦労するだろうな、というサイズです。

まずはスリーブを通すこと。これを必ず習慣づけてください。
私は2本目をつくるときに通し忘れたままハンダ付けをしてしまいました。
毎回付け忘れるの、なんとかならんかな…。

今回はマスキングテープでプラグを固定してハンダ付けしました。
それでもグラグラしてしまいますが、以前よりも圧倒的に作業がしやすかったです。

完成!
さっそく機材に繋いで音を出していますが、さすがの音質で非常に満足です。
慣れると1本10分程度で作れますね。
何本もケーブルが必要な方は自作した方がコストを抑えられるので、チャレンジしてみてはいかがでしょう?
機材に繋ぐ前に、テスターでショートしていないか必ず確認してくださいね!

