- キースイッチをルブした方がいいって聞いたけど、本当に効果はあるの?
- ルブのやり方を知りたい
こんな悩みを解決します。
■この記事を書いた人
キーボード大好きなプログラマー
その日の気分やシーンによって複数のキーボードを使い分けています
自分好みのキーボードに出会うべく、自作の沼に足を踏み入れました
キーボードの沼にようこそ。
キーボードを自作するならキースイッチの潤滑、いわゆる「ルブ」が推奨されており、キーの打鍵感や打鍵音をスムーズにする効果があります。
私は最初、潤滑剤程度でそんな効果があるのかどうか半信半疑でしたが、今では「ルブには確実にキースイッチをワンランク上のものにする効果がある」と断言します。
ルブのやり方や必要な道具についてまとめましたので、参考にしていただければと思います。
ルブ(潤滑)について
ルブ(潤滑)の意味
そもそも「ルブ」とはなんでしょう?
あまり聞き慣れない単語ですが、「ルブ」は英語です。
【lube:ルブ】
名詞:(エンジンに)油を注すこと
引用:WISDOM英和辞典
動詞:…に油を注す
「ルブ」はその意味のとおり、キースイッチを潤滑して打鍵感と打鍵音を改善することですね。
ちなみに「潤滑油(剤)」の英語は「lubricant:ルブリカント」です。
ルブ(潤滑)の効果
ルブの効果をまとめました。
- 打鍵感が柔らかくスムーズになる
- 摩擦音が軽減され、打鍵音がクリアになる
- バネ鳴りが無くなる
赤軸は「カコカコ」と言う軽快な音ですが、悪く言うとやや安っぽい軽さがありました。ですがルブすると明らかに音の雑味が消えて、キースイッチの底打ちや跳ね返りの音がクリアになります。
今思えばスカスカしていた打鍵音も、密度が増して音の重心が低くなりますし、甲高い響きや摩擦音もなくなってスムーズになりました。
これだけでも驚いたのですが、メカニカル特有の強めに叩いたときの「カーン」というバネ鳴りが鳴らなくなったのには感動しました。
参考文献:Learning Custom Mechanical Keyboard
ルブをするにあたって「Learning Custom Mechanical Keyboard」を参考にしました。
高井直人氏による自作キーボード(厳密にはカスタムキーボード)の名著で、ルブについても詳しく書かれています。
電子書籍・紙媒体で販売されており、「BOOTH」や「遊舎工房」あたりで購入できます。
発行日 | 2019年9月22日 初版 |
著者 | 高井直人 |
表紙イラスト | Orca(@kuroorcas) |
サークル | recompile keys(サイト) |
判型 | B5 |
ページ数 | 48P |
印刷 | 有限会社 ねこのしっぽ |
ルブ(潤滑)に必要な道具
ここではルブに必要な道具を紹介します。
- 潤滑剤
- キースイッチオープナー
- マイクロアプリケーター(ファインなどのφ1.5mm 推奨)
- バッグルブ用の小袋
潤滑剤
リニアとタクタイル、そしてスプリングでそれぞれ別の潤滑剤の使用を勧められていますが、さすがに3種類の潤滑剤を購入するのはキツいので(潤滑剤は結構高い)、私はキースイッチ用に万能潤滑剤の「Tribosys 3204」と、スプリング用に「Krytox GPL105」を使用しています。
Self-Made Keyboards in Japan:「Tribosys」「Krytox GPL」
キースイッチオープナー
キースイッチオープナーはその名のとおり、キースイッチを分解するための道具です。
なくても分解できますが、非常に大変で効率も悪すぎます。指も痛くなる。
そんなに高いものではないので、オープナーの購入をおすすめします。
画像はAmazonで購入したキースイッチオーナー。
「Cherry・Gateron・Kailhスイッチに対応」とのことですが、ほとんどのキースイッチに対応しています。(ロープロファイルスイッチや通常のコンピュータキーボードには適していません)
オシャレなケースや筆、ステムを掴むためのジェムホルダーも付属しているのは嬉しいです。
マイクロアプリケーター
マイクロアプリケーターは極細の綿棒です。
まつげエクステやペットの歯・耳掃除など、細かい箇所の作業に便利です。
筆でもルブできますが、マイクロアプリケーターなら気軽に使い捨てできますし、いろんな用途で使用できるので持っておくと便利です。
かなり細かい作業になるので「ファイン:φ1.5mm」がおすすめです。
バッグルブ用の小袋
バッグルブ(後述)をするのであれば、密封できる小袋があると便利です。
100均に売っていますが、購入したキーボードパーツはたいていこの袋に入っているので、バッグルブのためだけにわざわざ買う必要はないと思います。
ルブ(潤滑)のやり方
それでは「ルブ」のやり方を見ていきます。
作業は単純なので、キースイッチひとつにつき1〜2分で完了します。
キースイッチを分解する
まずはキースイッチの分解です。
上の画像のようにキースイッチをキースイッチオープナーにのせて、指で上から押し込むだけで分解できます。
キースイッチを分解したところ。
左から「ボトムハウジング」「スプリング」「ステム」「トップハウジング」です。
キースイッチによってはすでに潤滑されているので、その場合はグリスを拭き取って改めて潤滑します。
しっかりと潤滑剤が塗布されている場合、「Learning Custom Mechanical Keyboard」によると「超音波洗浄機と中性洗剤でしっかりと落としておきましょう」とのこと。
うーん、さすがにそこまでやるのは大変です…。
キースイッチは一気に分解してしまった方が効率的に作業できます。
分解したパーツ、特にスプリングはふとしたはずみで飛んでいってしまうので、すぐに袋やケースにしまいたいところ。
スプリングは「バッグルブ」をつかう
まずはスプリングのルブから行います。
スプリングのルブはオイル潤滑剤の「Krytox GPL105」を使用します。
画像のようにスプリングをまとめて袋に入れ、潤滑剤を少量たらして袋を振ります。
潤滑剤をたらす量は数滴でOK。「スプリングが湿っているかな」という程度でも効果を感じます。
この手法を「バッグルブ」と呼び、スプリング一本いっぽんに潤滑剤を塗るよりはるかにラクで効率的です。
ボトムハウジングとステムをルブ(潤滑)する
次はボトムハウジングとステムのルブです。
ルブする箇所は、キーの押下時にハウジング・ステム・スプリングが接触・摩擦する箇所です。
画像を見ると分かりやすいです。
少量の潤滑剤をマイクロアプリケーターにとり、薄く塗り広げます。、潤滑剤をつけ過ぎないように気をつけて下さい。
トップハウジングは「Learning Custom Mechanical Keyboard」によると、「それほど効果を感じる部分ではないので、潤滑を省略してもいいでしょう」とのこと。
試しにトップハウジングを何個かルブしましたが、確かに違いが分かりません。
またタクタイルの場合も、リーフとステムの接点を潤滑するとタクタイル感が大きく変化してしまうのでルブをしません。(リーフ:ボトムハウジングの金属板)
タクタイルフィーリングを変化させてでも打鍵感を滑らかにしたいときには潤滑をして下さい。
組み立ててルブしたキースイッチを楽しむ
必要箇所にルブし終えたらキースイッチを組み立てます。
ぜひルブする前と後のキースイッチの音を耳元で聞き比べてみて下さい。
カサカサとした「ステムとハウジングが擦れる音」がかなり軽減されているはずです。
実際にキーボードにマウントしてキーキャップを取り付けてタイピングして下さい。
打鍵感・打鍵音ともに別物になっていることを実感して頂けるはずです。