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【泥沼注意!】オーディオ用抵抗器の音質を比較|機材自作の備忘録

オーディオ用 抵抗器
記事内に商品プロモーションを含んでいます。

ここ数か月は友人に頼まれてDIの制作に励んでいました。

「DIなんてシンプルな機材、質のいい素子で組めばそれなりになるだろう」と思って安請け合いをしたのですが、これが非常に奥の深い世界でした。

この素子は低音が出るけど高域がイマイチ、こちらを変えるとサウンドは明るくなるけど平面的になるなど。
そのうえ、音声信号の経由しないダイオードなんかを変えるだけでも…もう何をやっても音質が変わってしまうので非常に悩ましくも楽しい時間でした。

DIを作る過程で有名な抵抗器、コンデンサ、ダイオードなどをある程度買い集めて知見もだいぶ貯まってきたので、その音質についての備忘録を記したいと思います。

まずは抵抗器編です。

本記事はプロオーディオ自作・DTMer寄りの感想となります。
ピュアオーディオの場合は、また違った意見になるかもしれませんのであしからず…

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抵抗器の音質比較環境

抵抗器の比較は、下記DIの回路図のR1を付け替えて検証します。
機材の上流にあるほどその素子の影響を受ける印象ですね。

ちなみにオペアンプも自作しました。
ここにも少なくない抵抗器を使うので、素子の選別は困難を極めました(笑)

DIの簡単な回路図

今回はアコースティック・エレクトリックギター、エレクトリックベースをDI経由でオーディオインターフェイスに繋いでPCに録音したものを聴き比べます。
ですのでモノラルかつ楽器単体での音質比較になっています。

その他の注意点としては

・抵抗器は100R前後・1/4Wのものをメインに使用したが統一はしていない
・厳密に波形の比較まではしていない
・あくまで私の環境下での感想である
・エージングは50時間前後、基本的に音声信号のみ使用
・方向性(抵抗の向き)は統一

です。

特にエージングは重要で、やはりこれを行わないと評価のしようがありません。
2時間もエージングすると音が良くも悪くも変化するので一喜一憂しますが、50時間あたりで使える音になってきますね。
それまでは音がまとまらない、暗い、低音が足りない…などなど。
ですが、不思議と未エージングの状態でも「これだ」と思う素子は分かるものです。

ちなみに、「抵抗器を入れ替えて音が変わった気がするけど、ぶっちゃけよく分からない」という方をたまに見かけますが、可能な限り高精度に録音して聴き比べないと、微細な違いは評価ができないのではないか、と思います。

そしてオーディオ機器はこの微細な変化を組み合わせて作り上げるわけでして、機材の自作や素子の比較には、それなりの録音機材とモニター環境が必須ですね。

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それでは本題に入っていきましょう!

金属皮膜抵抗の音質比較

まずは金属皮膜です。
オーディオでは雑音の乗りにくい金属皮膜をメインに使用する傾向があります。
この中で気に入ったものを、まずは基本に組んでいくのが良いのではないでしょうか。

制作当初は秋月で購入できるFaithful Link社のもの(汎用)で試作していましたが、音の曇りや音像の小ささが気になり、あれよあれよとオーディオ用に追いやられてしまいました。

音の艶や組み合わせ次第で出せるコンプ感が面白いんですけどね。なんと言っても安いですし(笑)

タクマン REY

タクマン REY 金属皮膜抵抗

定番の金皮ですね。 入手性が良くコスパの高い抵抗です。
音はスッキリとしていて中高域にザラっとした特徴を感じます。

ソリッドなサウンドが売りですが、中域にやや物足りなさを感じるので中域が出る素子と組み合わせて使いたいところ。
私は逆に、サウンドをシュッと引き締める用途に使うことも多いです。

方向性(抵抗の向き)について語られることも多い抵抗です。

DALE RN-55

DALE RN-55 金属皮膜抵抗

こちらも自作定番の金皮で、いろんなところで売っているので入手性は最も高いです。

音はクールかつマイルドになる印象ですが、マイルド系にありがちな音の曇りは少ないです。
高域より低域の方が得意な印象で、これを足していくと音が太くなり音圧も出てきます。
音が軽いときに低域の補強に使うといいかも。

RN-55ばかり使うと音が丸くなりすぎるかな…モニターライクな音と評している方がいましたが、その通りだと感じます。

PRP PR9372

PRP 金属皮膜抵抗

こちらも自作派の定番になりつつあるのかな。赤い皮膜がカッコいいです。

エージングしていない状態で音を聞いたとき、その中域の濃さに「ハッ」としました。が、エージングが進むと割と普通の音になるのが残念です(笑)

たまにあるんですよね、「エージングされていないこの音が欲しい」っていうときが。

中域は文句なしですが、低域はやや軽く感じるので、足りない場合は別の素子で補強が必要。
PRPばかり使いすぎてもシャリシャリ音が目立ちます。

「中高域はPRP、中低域はDALE RN-55が得意」という感じで、私はこのふたつをメインに音作りしています。

LGMFSA

LGMFSA 金属皮膜抵抗

Bispaで購入できます。(汎用のLGMFSと似ているので混同注意)
音に低音の圧と中域のジャリっとした感じが加わるので、そこが弱いときの補強に試したりしますが、反面音が曇る印象もあります。

カーボン系抵抗の音質比較

続いてカーボン系です。
カーボン抵抗にはロマンを感じるのは私だけでしょうか?

この記事を書く割と最近まで、カーボンは金属皮膜と比べて音が抜けないので使いづらい印象がありましたが、固く軽くなりがちな金属皮膜と混ぜると音に厚みや色気が増して非常に良い感じになります。

これが不思議と金属皮膜だけでは出せないんですよね。

タクマン REX

タクマン REY カーボン系抵抗

金属皮膜のREYと対をなす(?)、カーボン系の定番抵抗です。
音はREYと似ていますね、さすが兄弟。こちらのほうがサウンドがやや低域にシフトしていて荒々しいかな。

REYも方向性にご注意。

Allen Bradley(アーレンブラッドレイ)

Allen Bradley 金属皮膜抵抗

カーボン系のなかでも特に人気の抵抗ですね。多くのビンテージ機器に使われていたようです。
未エージングの出音は、「軽い・まとまらない・伸びが無い」と酷いものでしたが、エージングが進むとバランスの取れた音色になります。

演奏時、ギターのアルペジオでは出音がやや重く感じますが、人によってはこれが「艶やか」・「伸びが無い」と評価が分かれそう。

現代的なHi-Fiな音ではない枯れた音なのですが、他の抵抗では出せないコクのようなものを感じます。コンプ感かな。

熟成されて角の取れたウイスキーみたいですね、ずっと聴いていたい音です。

STACKPOLE(スタックポール)

STACKPOLE カーボン系抵抗

カーボン系の中では軽めで腰高になり、音像もやや小さくなります。
ですがその分中域に旨みが凝縮されていますし、物足りない印象がないどころか凄く魅力的です。
音の明るさと抜けはカーボン系No1でしょう。

演奏時、Allen Bradleyに似た「重さ」も感じます。

TRW

TRW カーボン系抵抗

TRWのカーボン系には、「カーボン(左)」と「カーボン+金属皮膜(右)」があります。

両者とも明るめの音で、中域の厚みが気持ちいいです。
はじめはカーボンのほうがより音に重みがありますが(~50時間ほど)、さらにエージングが進むとそれが逆転したり…素子の評価は難しいですね。

ミッドはやや薄くドンシャリ傾向かな…ギターでは弦のシャリシャリ感が強調されますが艶は残している。
ベースとエレキギターでは、TRWの特徴の中低域が強調されて聞こえるので、ハマれば無二の音になると感じました。

その他:巻線、金属箔抵抗など

その他の巻線・金属箔など
この辺りは高価かつ国内の扱いが少ない傾向ですが、それぞれ唯一無二の音ですね。
ここぞというところに使用するのがおすすめです。

DALE NS-2B(巻線抵抗)

DALE NS-2B 巻線抵抗

音の良さから人気の高いNS-2Bですが、どうやら本来はオーディオ用ではないみたいです。

巻線抵抗は音に艶が乗るとの評判ですが、確かにそんな感じでしょうか。

見た目どおり低域が出ますが、意外とハイも出て暗めのドンシャリな音。
ルックスも音もカッコよく、どこかで使いたいと思わせる魅力があります。

巻線をフィードバック抵抗として使うと発振する恐れがあるのでご注意を。

Mills Resistor MRA(巻線抵抗)

Mills Resistor MRA 巻線抵抗

こちらも巻線ですが、NS-2Bよりも中域が出ていますね。マイルドで明るい印象です。
ドンシャリ気味なNS-2Bの中域が薄いとも言えるのかな。

そういうわけで、特にギターなどはMRAのほうが「手ごたえ」があるので弾いていて気持ちいいです。

巻線系の音が欲しいとき、NS-2Bのほうがカッコいい音なのですが、このMRAがハマることも多いです。

こちらもフィードバック抵抗としての使用には注意。

Vishay VSR(金属箔抵抗)

Vishay VSR 金属箔抵抗

いよいよ1本千円を超えてきます。

変な癖や良い意味で個性を感じず全体域が出ます。そのため他の素子との相性を考えずに使える抵抗です。

フラットでありつつもハイにピークがあり、楽器のおいしい周波数を出してくれる印象です。

Vishay VAR (金属箔抵抗)

オーディオ用 金属箔抵抗 VAR

1本2千円を超える意味不明な抵抗です(笑)

音質は各所で絶賛されているとおり、一切の癖や曇りがありません。
VARの音を聞いた後ではVSRですら音の曇りを感じます。
何より立体感が素晴らしいですね、平面的だった音が一歩前に出てきます。

クリアで自己主張が無いながらも、楽器を引き立たせてくれる音質です。

VARだけでは楽器の量感や迫力が出しにくいので他の抵抗と混ぜて使います。

Vishay SMM0204 (メルフ型抵抗)

Vishay SMM0204 メルフ型抵抗

こちらはオーディオ用ではないのですが、どこかのブログで「音が良い」と拝見したので使ってみました。

メルフ型と呼ばれるカプセルタイプの抵抗で、画像のように銅線を付けてテスト。

曰く「VARに近い粒子の細かさを感じる」とのことですが、確かにそんな印象です。
立体感も素晴らしいですね。
中高域~高域が得意な明るくハリのあるサウンドですが、低域を出すのは少し苦手でしょうか。

価格は安いのですが入手性が悪く、海外のMouserDigikeyあたりで買う必要があります。
他に欲しいものがあるときに、送料無料になる金額までまとめて購入するのがおすすめです。

さいごに:機材はしっかり煮込みましょう

しばしば「音の良い抵抗は?」と語られますが、一定の水準以上の素子であれば音質に優劣はなく、その個性をどう活かすかが肝心ですね。

例えばVARは素晴らしい音質ですが、それだけで回路を組めば最高の音になるかと言えばNOでしょう(やってみないとわかりませんが、コスト的にも不可能…)。

また、ピュアオーディオでは評価の低い素子も、楽器用途・音楽制作であれば輝くこともありそうに感じました。
原音再生には邪魔になりそうなクセも、楽器の音作りという点では強い個性になり得ます。

ところで私は最初、機材制作は上質な素材をシンプルに足していく「寿司づくり」のようなものだと思っていました。
ですが、素材の長所や短所すらも計算に入れて理想の音に近づける過程は、カレーのルーやラーメンのスープづくりに似たカオティックな作業であると感じました(エージングが煮込みですね)。

前述しましたが、今回はエレキギター、アコギ、エレキベースのDI用途での比較なので、「アンサンブル(2Mix)・歌・ピアノ・打楽器・弦・ブラス…がどう聞こえるか」というところまでは踏み込めていません。
この記事の反応が良ければ追加でテストしようかな~。