「AI作曲家」という触れ込みの作曲AI「AIVA (エイヴァ)」。
AI作曲家と聞くと、「最近よく話題になるメタバース(3D仮想空間)と相性が良さそうだ」とか、「ITの発展とともに音楽もこういう風に変わっていくのかな」などと、ワクワクする一方で少しさみしいような複雑な気持ちがあります。
どんなもんかな、とAIVAで軽く遊んでみましたが、最近さわったAI作曲ツールの中でも生成される曲のクオリティの高さは群を抜いていると感じました。 エディターも高機能で正直驚いています。
それではさっそくAI作曲家「AIVA」について見ていきたいと思います。
おすすめのAI作曲ツールと特徴
主要AI作曲ツールも増えてきましたが、どれも同じというわけでなくそれぞれに個性やできること・できないことがあります。
簡単にまとめたので導入の参考にしてみてください。
AIVA:BGM制作・作曲向け
- 機械くさくない高品質な演奏
- DAWのような楽曲編集機能
- プライベートでの使用に限り無料で曲のダウンロードができる
- 生成される曲はわりと似通っていて、すぐにAIVAとわかる
サイト:aiva.ai
Amper Score:BGM制作向け
- 生演奏のようなBGMが作曲できる
- 生演奏をサンプリングした最強の音源ライブラリ
- 楽器や音色を選ぶのが楽しい
- 演奏内容の細かいエディットは不可
- 曲のダウンロードは有料
サイト:ampermusic.com
Flow Machines:ミュージシャン向け
- ミュージシャンがメロディ・フレーズを導入したいならこれ!
- かっこいい演奏なのでそのまま使える
- 豊富なジャンルのプリセットから作曲できる
- iPad版(Flow Machines Mobile)は無料で利用できる
- フレーズの生成はできるが、伴奏やBGMの作曲ツールとしては使えない
- iPad版では生成したフレーズのエクスポートはできない
- Macでの利用はM1チップ搭載機種のみ(Windows は不可)
Magenta Studio:ミュージシャン・作曲家・エンジニア向け
- ミュージシャンが簡単に音楽制作に導入できる(アプリをPCにインストールして利用)
- ふたつのフレーズを合成して新しいアイデアを生みだすなど、斬新な作曲ができる
- APIが公開されているのでアプリ開発やプログラミングに活用できる
- 手直ししないと使える演奏にはならないことが多い
- 情報が少ない・整理されていないので開発にはてこずりそう
サイト:Magenta Studio
AWS DeepComposer:エンジニア向け
- 機械学習・ディープラーニングを学びたいならこれ!
- ドキュメントが整備されているので使いやすい
- 利用にはAWSのアカウント作成が必要(無料利用枠で使えるが、クレカの登録が必要)
- 純粋に音楽制作のみに使いたいミュージシャンには導入までの敷居が高く不向き
サイト:aws deepcomposer
こうしてまとめてみると、それぞれに明確な個性があっておもしろいですね。
ご自身の目的に合ったツールが見つかれば幸いです
AIVA (エイヴァ)とは
「AIVA Technologies」はルクセンブルグのスタートアップ企業です。
コンピュータサイエンティストで作曲家でもあるピエール・バロー氏が、映画「her/世界でひとつの彼女」から影響をうけてこの「AI作曲家」を開発したとのこと。(AIVAは「Artificial Intelligence Virtual Artist」の頭文字から命名)
そう遠くない未来のロサンゼルス。ある日セオドアが最新のAI(人工知能)型OSを起動させると、画面の奥から明るい女性の声が聞こえる。彼女の名前はサマンサ。AIだけどユーモラスで、純真で、セクシーで、誰より人間らしい。セオドアとサマンサはすぐに仲良くなり、夜寝る前に会話をしたり、デートをしたり、旅行をしたり・・・・・・一緒に過ごす時間はお互いにとっていままでにないくらい新鮮で刺激的。ありえないはずの恋だったが、親友エイミーの後押しもあり、セオドアは恋人としてサマンサと真剣に向き合うことを決意。しかし感情的で繊細な彼女は彼を次第に翻弄するようになり、そして彼女のある計画により恋は予想外の展開へ――!“一人(セオドア)とひとつ(サマンサ)”の恋のゆくえは果たして――?
「her/世界でひとつの彼女」より引用
AIVAはこれまでに NVIDIA、vodafone、TED などに楽曲の提供をしていて、YouTubeでもAIVAの制作した楽曲を視聴できます。
著作権に注意
AIVAで生成した曲はダウンロードすることができますが、利用する際は著作権にご注意ください。
AIVAは無料で使用できますが、無料枠には下記の制限があります。
- 商用利用は不可(曲の著作権はAIVAが所有)
- AIVAにクレジットを付与する必要がある
- 曲のダウンロードは月3回まで
- 曲の長さは3分まで
- MP3とMIDIファイルでのみダウンロード可能
制限はこんな感じですが、著作権に関しては特に気を付けたいところです。
例えば「良い感じのBGMができたのでYouTubeの動画で使用して収入を得る」という場合は「Standard Annually(月額11ユーロ)」に課金する必要があります。
詳しくは公式ページをご覧ください。(英語のサイトですがGoogle翻訳で十分読める日本語になります)
AIVAでAI作曲をする流れ
それではAIVAでAI作曲する流れを見ていきます。
アカウントの作成
まずはAIVAのトップページでアカウントを作成します。「Create an account」に進みましょう。
ちなみに、左下の再生ボタンでAIVAの音楽を視聴できます。
アカウントが作成されると、このような「dashboard」画面に入れます。
さっそく曲をつくってみましょう。画面下赤枠の「Create Truck」をクリックします。
作曲を始める
PRESET STYLESから作曲したい曲のジャンルを選びます。選べるジャンルは以下のとおり。
- Modern Cinematic
- 20th Century Cinematic
- Sea Shanty
- Jazz
- Fantasy
- Pop
- Rock
- Chinese
- Tango
- Electronic
- Ambient
- Hip Hop
今回は「Jazz」を選択します。
SELECTED PRESETで曲調や曲の長さなどを指定します。初期設定は「Auto」ですが、せっかくなので変更してみます。
明るい曲にしたいので Key はジャズでよく使われる「B♭メジャー」、曲の速さは「Medium」がいいかな…といった感じで、AIに作ってほしい曲の指示を出します。
- KEY SIGNATURE
曲のキー - TIME SIGNATURE
曲の拍子 - PACING
曲のテンポ - INSTRUMENTATION
使用する楽器 - DURATION
曲の長さ - # OF COMPOSITIONS
生成する曲数
※ジャンルによって設定できるパラメータに多少の違いがあります。
設定が完了したので作曲を開始します。「Create your track(s)」をクリック。
数秒で曲が生成されました。
一曲目はストリングス、二曲目はサックスがメロディを演奏していますね、どちらもジャズバーで聴けそうな演奏です。
三曲目もストリングスが主旋律を演奏していますが、こちらは映画のBGMで使われそうな印象です。
曲のアレンジをする
「生成された曲は良い感じだけど、メロディの一部だけ変更したい」という場合もあるかと思います。
AIVAではEdit機能も優れていて、直感的に曲のアレンジができるようになっています
曲のアレンジをしてみましょう。
左上か右下の赤枠をクリックして「Editor」画面に進みます。
DAWの経験者であれば見慣れた画面ですね。ピアノロールでエディットしていきます。
- アレンジしたいパートをクリックすると各種エフェクト・ピアノロールが開閉します。楽器の変更や音量、エコーの量などが調節できます。
- ピアノロールのノートをドラッグして音程や音価を変更します。
- 曲を再生してみましょう。「⇦」「⇨」でアレンジする楽曲の選択もできます。
YouTubeでチュートリアルが見れる
ここまで画像とテキストでAIVAの使い方を見ましたが、公式のYouTubeチャンネルでチュートリアルを見ることができます。
音声は英語ですが映像だけでも何ができるかは理解できますし、日本語字幕機能もあるので問題ないかと思います。
さいごに:AIVAを使った感想
駆け足でしたが、AIVAの紹介とAI作曲の流れを見てきました。
AIVAの楽曲を一聴して思ったのは「機械くさくない、クオリティの高い演奏」ということ。
こういったAI作曲の演奏はどうしても人間味がなかったり、曲として成立していなかったりするのですが、AIVAが生成した楽曲は生演奏をレコーディングしたものと言われても違和感がありません。
楽器単体も生演奏のものに近く、たとえばブラスの「音のかすれや強弱」もしっかりと表現していてちょっと驚きました。全体的に音質も良いので自作動画のBGMにも十分使えそうです。
また、エディターも高機能でできることが多く、ここまで来ると「クラウド上で使えるDAW」という印象です。
高品質なBGMをサクッと作ってみたい方は、ぜひ試してみてください。
余談ですが、せっかく「AI作曲家」ということですので、AIVAの擬人化を待ち望んでいます!